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ZEIN株式会社

2017年にZEIN株式会社を設立した代表取締役 CEOの志賀野 寛彦氏は、「多様なソリューションや事業を展開するのは、社員がモチベーション高く仕事ができ、結果的に会社の成長につながるから」と語る。
自身のキャリアやマネジメント観、ZEINの特徴や今後の展望について話をうかがった。

機動的にソリューションが変わるため、自身の志向に合うソリューションに関わりやすい

大森

ZEINを起業した経緯を教えてください

志賀野氏

私は新卒でアクセンチュアに入社して4年ほど勤めた後、1年半ほど世界一周旅行に出ていたことがあります。学生の頃から漠然と経営者になりたいという想いがあり、日本に戻ってからはフリーのコンサルタントとして独立しました。

しかし、1人でコンサルタントをしていても仕事の広がりがなく、面白くないと感じるように。一緒に仕事をする仲間を見つけたいと思うようになりました。

当時、私は29歳で、周囲の友人たちは仕事に脂がのっているとき。そのときは一緒に仕事ができる仲間は見つけられませんでした。それなら小規模なコンサルティングファームに入社して仲間を見つけたり、自分が社長になるという選択肢もあると考え、アロウズコンサルティングに入社しました。

その後、アロウズコンサルティングがEYアドバイザリー(現EYストラテジー&コンサルティング)に買収されるなど変化はありながら8年ほど経験を積み、きりのいいところで退社。アロウズ時代から一緒にやってきた20名ほどの仲間と起業しました。

大森

コンサルタントとして成長を感じた経験について教えてください。

志賀野氏

コンサルタント時代は一貫して大規模なIT導入プロジェクトに携わってきました。マネージャー、シニアマネージャー、パートナーとポジションが上がっていき、最終的には150名のプロジェクトのリーダーに。プロジェクトをコントロールする立場のさまざまなバリエーションを経験できたことが、大きな学びになりました。

クライアントワークは、お客さんの期待値に応えればいいのでシンプルでしたが、大きな組織ほど社内政治が複雑だったり、承認プロセスが無駄に多かったりと手間がかかり、立場が上がるほど、それらの比重が増えていきました。思うようにいかないことを成し遂げる達成感がある一方で、より独立したいと思う気持ちは強くなっていきました。

大森

ZEINの特徴について教えてください。

志賀野氏

クライアントの業種を限定せず、ITコンサルティングサービスを上流から下流まで幅広く提供しています。社員数が数人の企業から数万人の企業まで、大小様々な企業が対象です。

大手コンサルティングファームではお手伝いが難しい、中小企業やベンチャー企業など本当に困っている企業さんの助けになれているという実感があります。

大森

全方位で多様なサービスを展開している場合、社員に求められるレベルは高くなるように思います。その点は、どのような工夫をしていますか?

志賀野氏

ITトレンドは1~2年で移り変わります。当社ではそのときに最もニーズのあるソリューションを取り上げ、チームを構成します。仮にソリューションのトレンドが1年後に終わってしまっても、スキルや経験は残るので次に活かすことができます。

教育という点では、オーソドックスなコンサルタント研修はもちろん、ソリューションに特化した研修、OJTなどを行っています。機動的にソリューションが変わっていくため、社員にとっては自分の志向に合うソリューションに関わりやすいです。

大森

社員の方はマーケットのニーズや情報などを自主的にスクラップして、動いていくようになりそうですね。

志賀野氏

社員がやってみたいと思うソリューションが、ZEINのサービスとして展開できると判断すれば、プロダクトオーナー企業とのパートナー契約を結ぶまでは僕も一緒に動きますが、その後の展開は、社員主導で行い、各々の自主性に任せてサービス展開プランを検討してもらいます。

多様なソリューションを展開しているのは、単純に同じソリューションだけをやり続けると、社員のモチベーションが下がるからです。たとえば、コンサルティング業界ではSAPばかりをやり続けている企業がたくさんありますが、そのようなトップダウンでキャリアを決めてしまうと、仮に収益は上がっても社員の会社に対する想いは醸成されず、結果として社員自身の成長スピードも上がっていかないと考えています。だからこそ、多様性をもって社員をいい意味で刺激しながらビジネスを展開していきます。

社員がモチベーション高く働ける環境をつくるのが私の仕事

大森

どのような人材を求めていますか。

志賀野氏

周りのメンバーと協力してプロジェクトを推進できる人材、またマーケットニーズに合ったサービス開発ができるような人材を求めています。そして、なによりも大事にしていることは、ZEINのカルチャーを深く理解し、「社員全員(ゼイン)でクライアントと自社の成長にコミットする」という考えに共感してくれること、そんな人と働きたいですね。

大森

社員の自主性やモチベーションを大事にされているんですね。

志賀野氏

会社は人材、事業は継続性が大事ですから、社員がモチベーション高く働ける環境をつくるのが、社長の役割であり、僕の仕事だと思っています。

また、10億~50億規模の案件をとれるトッププレイヤーが1人いるよりも数千万の案件を取れる社員が複数いる組織のほうが、社員も会社も成長していくと考えています。

ZEINは、会社という大きなピラミッドの中に、小さなピラミッドがたくさん存在する組織であってほしい。社員が提言したソリューションでチームが作られ、ピラミッドができていく。

それぞれのピラミッドの頂点に立つことで、社員の視界、役割が変わり成長できる。ひとつの頂点を経験したら、次はもう少し大きなピラミッドを目指すという感じで、違うチャレンジができる環境にしたいと思っています。

大森

社員が提言して実現した、小さなピラミッドの事例を教えていただけますか。

志賀野氏

各サービスにはそれぞれリーダーがいるので、リーダーが率先して案件を取ってきたり、必要なメンバーを育成したりしています。私に相談することはありますが、一つの事業責任者としてすべてを任せているので、それによってリーダーが成長したなと思うことは多いですね。社員が育ち、会社としても多様なサービスを提供することにつながっています。

大森

そういった環境ですと、退職率も低そうですね。

志賀野氏

設立してから3年半たちますが、退職者は5名です。最近は新卒採用にも力を入れていて、新卒一期生は入社して1年が経ちました。大手とは違い少人数のプロジェクトが多いので、1年目の社員も立派な戦力です。最初はもちろん心配な面もありましたが、現場で揉まれて1年たった今では大きな成長も感じています。

社長も役員も単なる役割でしかない。フラットに意見を交わしていきたい

大森

今後の展望を教えてください。

志賀野氏

コンサルティングは典型的な労働集約型のビジネスなので、社員を増やすことによる事業の拡大は必然だと思っています。また、別の軸として自社プロダクトを利用したサブスクモデルの展開も今夏に予定しています。他には、金融チームとして新たなプロダクトの開発体制を整備していたり、インフラ領域でのシステム運用部隊の構築も検討中です。

コンサルティングビジネスと並行して動かしているのは事業の多角化です。現在もピラティススタジオを運営しています。その理由は、今いる社員全員がZEINというひとつの箱の中で満足できる仕事を創っていきたいからです。

現在、コンサルタントをやっている人も、経験を重ねてくると「コンサルティングではなく違う仕事がしたい」と思うようになるかもしれない。そんなとき、やってみたいと思えるワクワクする事業がZEINにあればと考えています。

だからこそ、新規事業はどんどんやっていきたいですね。ピラティススタジオの事業を始めたこともあり、今では社員からコンサルティングとは全く異なる新規ビジネスの事業プランが提案されたりしています。

僕が実現したいのは、単にコンサルティング事業を拡大することではなく、ZEINという組織そのものを大きくすることで、そこで働く社員全員が幸せになれる会社を創ることです。

大森

志賀野さんには、多くの人がついてくるイメージがあります。何か意識していることはありますか?

志賀野氏

軽い口約束はせず、タイムリーに明確な判断を下すということを強く意識するようにしています。
また、日々の業務の多くを社員に任せている一方で、チャレンジして失敗したときにケツをふく覚悟は常に持っていますし、泥水も一緒にすすります。もちろん、はしごを外すようなことはしません。

僕自身は社長がえらいものだとは少しも思っていないんです。社長も役員も単なる役割だと思っています。社長と社員は人間としてフラットな関係なので、言いたいことを言い合って仕事していきたいなと思います。

僕自身、器用なタイプではないので、多くの人に頼りながらこれまでやってきました。1年目の社員でも自分ができないことをやれそうだなと思ったら、すぐ弱みをみせて「お願い、これやって」と頼んだりしています(笑)

大森

そこが志賀野さんの人間力なんでしょうね。お互いを尊重して切磋琢磨している社風を垣間見た気がします。

左:ZEIN志賀野氏 右:弊社大森

構成・編集:久保佳那
撮影:赤松洋太

※本記事の内容はすべて取材当時のものです。