株式会社シグマクシス
コンサルティング事業だけでなく、事業投資や事業運営も行っている株式会社シグマクシス。常務執行役員である齋藤 立氏は、「既存の大きな組織の仕組みの中で仕事をするのではなく、自らが主役となって価値を生み出したいと考えている方を、ぜひ仲間として迎えたい」と語る。自身のキャリア、シグマクシスが推進する3つの変革、求める人物像や展望について話をうかがった。
INDEX
「自分で価値を生み出す仕事がしたい」と強く思ったとき、倉重と出会った
大森
これまでのキャリアのターニングポイントを教えてください。
齋藤氏
私のキャリアのターニングポイントはいくつかあります。 まず、新卒で入社したマッキンゼーを離れ、コロンビア大学のMBA、そして金融とアートに触れたニューヨークでの3年間を経て、シグマクシスを創業した倉重英樹(現:代表取締役会長)と出会ったことです。 実は、学生時代はあまりビジネスに関心がありませんでした。しかし、サンフランシスコでNPOのメディア戦略に携わった経験から、非営利組織のリーダーたちと交流する中で「どんな領域においても、ビジネスを知らなければ、新しいものを創り出せない」と感じました。それならばハードな環境でビジネスを学ぼうと考え、新卒で戦略コンサルティングの仕事に飛び込みました。 現場のトランスフォーメーションが好きで、20代は夢中になって働き、その中で多くのことを学びました。同時に感じていたのは、ロジックだけのコンサルティングの限界です。人の心を動かせなければビジネスは動かない。そのためにはまず、内側からビジョンを引き出すことが必要だと考えました。 コンサルティング業界での仕事に一区切りつけようと決意した私は、「今の自分と最も遠いところへ行こう」と考え、コロンビア大学のビジネススクールで学ぶ道を選びました。更に米国で1年間働き、次第に「自ら価値を生み出す仕事がしたい」という思いが強くなり、2008年に帰国。そんな私を待っていたのは、RHJインターナショナルというファンドの日本代表だった倉重との出会いでした。当時、倉重はシグマクシスの立ち上げ準備の最中で、新しい構想を描いていました。「ダイバーシティ × コラボレーション=イノベーションという公式を大きなスケールで証明できる会社を創り、コンサルティング業界そのものを変えたい」。倉重のこの決意に呼応し、私もシグマクシスを創るメンバーの一員となったのです。
大森
倉重さんとの出会いによって、コンサルティング業界に戻る決意をされたのですね。
齋藤氏
現在のシグマクシスに繋がる「シェルパ」と「アグリゲーター」という構想にも共感しました。シェルパとは、もともとヒマラヤ山脈の登頂を目指す登山家のパートナーのことを言いますが、当社はお客様にとってのシェルパであることを目指し、互いの強みを生かし合いながらリスクと成果の両方を共有します。 そしてアグリゲーターとは、自らが主体となり仲間を巻き込みながらビジネスを創り上げていくプレイヤー。シグマクシスでは自社内のみならず社外の優秀な技術・人財ともつながり、その組み合わせによりパフォーマンス高くプロジェクトを推進することを重視しています。
このような新たなワークスタイルを確立できるプロフェッショナル像を世に生み出せば、既存のコンサルティング会社とは全く違うビジネスのカテゴリーを創る会社になるのではないか。そんな予感がしました。さらに、こうしたビジョンに惹かれて、様々なバックグラウンドを持つ人財が集まっていたことも私の背中を押しました。 ゼロからの立ち上げでしたので、メンバーの出身企業は100社以上。キャリアも価値観もバラバラなメンバーが、ビジョンを共有して目線を合わせるところからのスタートでした。それぞれ想いが強いけれどもデコボコした個性を持つメンバーが集まり自由に発言する様子を、当時は「野生の王国」になぞらえたりもしました。妥協をしない一人ひとりがチームとなり、「シェルパ」「アグリゲーター」をどう体現していけるか、これは本当に大きな挑戦でした。
大森
齋藤さんは、その創業時に、自ら新しいプログラムも立ち上げたそうですね。
齋藤氏
倉重からの指名で「CEO補佐」の任に就いたのですが、その一方で2009年に『Vision Forest』という人財・組織開発プログラムを、アート領域の先端ベンチャーであるホワイトシップ社との協業により立ち上げました。人の想いやビジョンを、アートの力で引き出そうとする試みです。 お客様はもちろん、社内の理解を得るのにさえ相当の時間を費やしました。事業としてなかなか成長せず、「突き詰めると問題の根は自分自身」という苦い真実と向き合わざるを得ない場面も何度となくありました。局面を打開できたのは、強い想いと多様な能力をもった社内外の同志たちがいたからで、「自己革新」と「コラボレーション」という言葉の重み、難しさ、そして意義を深く実感しました。 その後10年にわたり、『Vision Forest』は約100社から3000人以上の方が参画されるという実績を積み上げ、チームのメンバーも増え、当社の人財・組織変革プログラムとして進化を続けています。 シグマクシスでは外資系企業と異なり、日本の本社で、我々自身が全ての意思決定を迅速に行うことができます。当然、責任も伴いますが、自分の仕事にオーナーシップを持って進めることができる。不確実な挑戦や投資も、経営陣を説得できれば実行できる。これはどこでもできる経験ではないと思います。
「シグマクシスは圧倒的な当事者意識をもっている」というお客様の声
大森
御社が注力している「3つの変革」についてお聞かせください。
齋藤氏
3つの変革とは、DX(Digital Transformation)、SX(Service Transformation)、MX(Management Transformation)のことです。 DXがうたわれるようになって久しいですが、単にデジタル化するだけでは変革は起きません。事業そのもの、価値の生み出し方にも革新が不可欠です。SXとは、そうした既存の事業モデルから、デジタル時代の事業モデルへの転換や新事業の創造のことを意味しています。実際に私たちのお客様からは「DXと同時に事業変革も推進したい」というご相談が増えています。 そして、DXやSXを実現するには、ITや組織構造、人財の変革、つまり経営を支えるプラットフォームの変革であるMXを避けては通れない。事業や仕組みが変わるには、それを動かす仕組みや人の能力も進化していかなければなりません。
つまり私たちはDX、SX、MXは三位一体でないと、本当の意味での「トランスフォーメーション」の実現はないと考えています。そして何よりも重要なのは、企業それぞれのトランスフォーメーションが何なのか、各社のビジョンに照らして考えていくことです。これはシェルパである私たちだからこそ、お客様とともに踏み出せる一歩だと自負しています。
大森
他社と比べた御社のコンサルティングの特長を教えてください。
齋藤氏
我々の最大の特長は、先に述べた3Xに必要な能力を、統合的に提供できる社内外ネットワークを擁していることです。お客様が抱える経営テーマにとって必要な変革は何か、事業投資やその運営により培った経営者の目線と実業の経験をもって新たな事業を描き、AI、IoT、ロボティクスといったデジタルテクノロジーやSaaSをはじめとしたクラウドソリューションの知見により、スピーディーにプロトタイプを創り、実装する。 実行段階で欠かせないPMOによる推進力も兼ね備え、一気通貫での価値をお届けできます。一連のトランスフォーメーションを牽引するアグリゲーターとしての能力を持つ人財の存在も、大きな価値だと言えるでしょう。 また、当社では人財の能力を組織の戦略に当てはめるような発想はなく、個人の能力の広がりによって組織の能力が広がると考えています。日々新たなアイデアが生まれソリューションとしてくみ上げられ、まさに倉重が創設時に掲げた「ダイバーシティ×コラボレーション=イノベーション」が起きていることが、他にない魅力だと思います。 なお最近では、「従来のコンサルタントのイメージが変わった。シグマクシスがコンサルタントではなく、シェルパと名乗っている意味が分かった」と、お客様に言われることが増えています。シェルパとして心がけているのは、結果的にお客様のケイパビリティが上がること。プロジェクトを丸受けするのではなく、想いを持ったCxOや事業リーダーの右腕・左腕として現場に入り、お客様社員のみなさんとともに形づくり課題解決することで、お客様組織の成長に貢献するスタイルです。 先日も、1年間にわたり変革を並走したある企業の役員の方から、「シグマクシスは圧倒的な当事者意識をもっている。まるで自分の会社のように真摯に問題提起し、社内の人財を活かしながらプロジェクトを推進してくれる。こんな集団には初めて出会った」という嬉しいお言葉を頂きました。 また、私たちのこのスタイルを評価くださり、ひとつのプロジェクトが終わっても「次は別の領域で相談したい」とリピートいただく案件も多く、長期的にはビジネス拡大に繋がっている実感があります。
自分のストーリーに出会い、能力とキャリアを広げられる会社でありたい
大森
御社ならではのコンサルティングスタイルを貫かれているのですね。どのような人財を求めているのでしょうか。
齋藤氏
私は、プロフェッショナルのキャリアとして、2つの選択肢、つまりオプションAとBがあると思っています。オプションAは有名企業の一員になり、そこでの功績で評価されるキャリア。オプションBは、自分のストーリーを生きながら組織や社会に価値を発揮していくキャリア。自分の内側にある想いを起点にする、いわゆる「インサイドアウト」型のキャリアです。 当社が求めているのは、これまで身に付けてきたスキルを自分の強みとして、自らのキャリアを切り開きたい=オプションBを選択したいと考える人財です。もちろん、それが何かまだ分からない人もいるかもしれませんが、少なくともこういったキャリア志向に共感を持てるかは、大事だと思います。 自分自身が新しいブランドを創っていきたい、自分が主役となる物語を創っていきたい、あるいはそうした仲間とのコラボレーションを通じて、自らの物語とは何かを見つけたいと考える人にとっては、多くのチャレンジの機会がある会社です。 そして、その軸となる自らのプロフェッションを何か一つ持っていることは重視したいです。戦略立案や事業企画・開発の領域に限らず、それを実現するためのデジタルテクノロジーやクラウドの知見や活用経験、プロジェクトを推進するプロジェクトマネジメントのスキルなど。あるいは、事業会社や専門職などでの経験による、業界知識やノウハウを持っているなど、当社の能力の多様性をさらに高めてくれる人財にぜひ参画していただきたいですね。
大森
今、御社に入社することで得られるものについて教えてください。
齋藤氏
幅広い業界のお客様に対し、DX、SX、MXがミックスされたプロジェクトを、組織を超えたコラボレーションで提案し、実行しています。自分のプロフェッションを軸に、他の領域にもスキルを拡大する機会に恵まれると思います。お客様先に入り込むシェルパ型のプロジェクトを通じて事業運営に関わったり、ジョイントベンチャーを立ち上げ、その運営に参画したりと、コンサルティングの枠を超えた新たな挑戦に携われる機会も多いです。 いずれにしても、自分自身がどういうプロフェッショナルでありたいかという想いと、スキルをどう磨き続けるかで、その幅はいかようにも広げられる場です。
また社内には、他社から転職してきた社員が驚くようなスキルを持つ人、起業経験を持つ人、アカデミーや大企業のR&D出身のスペシャリスト、多様なネットワークを持ち常に社外と何かを仕掛けている人・・そんな多彩な人財がすぐ近くにいて、相談すれば自然に助けてくれる文化ですので、プロフェッショナルとしてのエコシステムが広がります。 私自身はそんな風に過ごしてきたためか、「ライフ」と「ワーク」のバランスをとるというよりも、その二つをあえて分けずに捉えるようにしています。ライフワークバランスの考え方は人それぞれですが、こんなタイプは私以外にもいて、仕事もプライベートもミックスで付き合いながら充実した時間を過ごせていると感じています。
大森
今後の展望について教えてください。
齋藤氏
2008年の創業後、5年でマザーズ市場に上場し、約10年で東証一部上場企業に。これを機にスタートした事業投資の領域は、この4月に新たな投資会社「シグマクシス・インベストメント」として立ち上がりました。2021年10月には、持株会社体制への移行により組織を再編し、コンサルティングと事業投資の両方の領域の専門性に磨きをかけつつ、ダイナミックな連携を図る体制となり、いよいよ我々のビジョン実現を加速するステージに入ります。 そうした中で、世の中も変化が進んでいくことでしょう。これまでのような金融資本の限界を超えて、人々が想いや志で繋がる「共感資本」という新しい価値観が浸透し、社会のあり方も変わってくると考えています。多くの企業様とアライアンスを組み、コラボレーションで仕事をしてきたシグマクシスだからこそ、そういった新しい社会を描き、実現できるはず。高収益な事業体でありながら、大きな社会価値を生み出そうとする我々の事業・組織創りそのものが、大きな社会実験であると考えています。
大森
大きな括りの質問になりますが、今後のコンサルティング業界はどのように変化していくとお考えですか?
齋藤氏
経済原理としては、メガプラットフォーマーと個人事業主の二極化が進んでいく傾向にあるかもしれません。どちらも良し悪しがあり、それぞれが進化も続けていくのでしょう。ただ、シグマクシスはそのどちらでもない特異な存在として、コンサルタントにとっての第三の選択肢であり続けたいと考えています。 メンバー一人ひとりが自分の内側の想いやストーリーを軸に「インサイドアウト」で生きている。同時に、困ったときに助けてくれ、コラボレーションで強みを生かし合える仲間がいる。かといって、メガプラットフォーマーのような、出来上がった組織の一部になるわけでもない。そんな他にはない組織へと進化し続けていきたいですね。 これは言うは易しですが、実践することが全てであり、かつ難しい。我々もまだ変化の途上ですが、この場所を選んで飛び込んできてくれた仲間たちとチャレンジを続け、コンサルティングというカテゴリーを超えた新しいプロフェッショナル集団として、次の時代を創っていきたいと考えています。
大森
組織の中での働き方に疑問を感じている人が、御社と出会うことで大きな変化がありそうですね。
構成・編集:久保佳那 撮影:赤松洋太