EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
新卒から20数年間、外資系コンサルコンサルティング会社で働いてきた田畑氏がEYストラテジー・アンド・コンサルティング(以下EYSC)に入社したのは2019年のこと。転職した理由を田畑氏は「本質的なビジネス変革につながるITコンサルティングがしたかったから」と語る。 EYSCのテクノロジー組織の強み、他のBIG4との違い、求める人物像などをうかがった。
従来型のITコンサルに違和感をおぼえて、EYにジョインした
大森
これまでのキャリアについて教えてください。
田畑氏
新卒で外資系コンサルコンサルティング会社に入社し、テクノロジー関連組織に20数年間所属していました。新卒のころはSAP導入のプロジェクトからスタートし、その後のその会社の飛躍にもつながった当時最大規模のプロジェクトに配属されました。 一番長く担当したのは大手通信企業です。若手に仕事をまかせる風土があり、早いタイミングでチームリーダーを経験しました。 サービスごとにシステムが乱立し、アーキテクチャも異なるという状況で、システム間を情報連携しながら業務プロセスを自動化する仕組みを構築しました。こうした企業システムの実態を知ることができた点も学びになりました。 長く1社の企業を担当するなかで私自身も成長し、プロジェクトマネージャーまで務め、さまざまな関係者との調整やメンバーのケアなど、多くの仕事を経験できました。 その後はオープン系のアーキテクチャやシステム開発のコンサルティングを中心に業界を問わず担当し、シニアマネージャー、マネージングディレクターとしてキャリアを重ねた後、2019年にEYSCに転職しました。
大森
20数年勤めた会社から、EYSCに転職した理由を教えてください。
田畑氏
オフショアも活用し多くの人材を投入して長時間かけて、企業のシステムを刷新して運用していく。そんな従来型のITプロジェクトに違和感をおぼえるようになったからです。 日本のIT活用は活況ですが、企業の国際競争力は高まっておらず、DX化は決してうまくいっているとは言えない。企業のビジネスインパクトは少ないにも関わらず、サポートしているITコンサルティング会社だけが収益を上げている状況もありました。 さらに、企業のIT活用はクラウドの時代へと移行し、これまでのように自社のシステムを作り変えるスタイルは減ってきています。
従来型のプロジェクトは、大規模で長期のウォーターフォール型になります。私自身、担当したプロジェクトは、プランニングだけで2~3年かかるほど大規模なものもありました。 プランニングと実装に時間がかかるため、それが終わる頃には活用予定のアーキテクチャがすでに陳腐化している。ITの進化に対して、導入アプローチが追いつけていない状況だと感じていました。 本来のプロジェクトの目的はビジネスの変革であるにも関わらず、なかなか本質的なコンサルティングができていないジレンマを感じていました。 しかし、大きな組織は人員も多く、従来型のITプロジェクトからの脱却は難しいです。そんなときに、EYが新たなテクノロジーコンサルティングの組織を立ち上げると知り、ジョインしました。
データ活用型のコンサルティングに舵をきる
大森
EYSCでは、どのようなテクノロジーコンサルティングを提供していますか?
田畑氏
EYSCは、クラウドとデータを活用したデータドリブン型のコンサルティングを進めています。 データの活用に慣れていないため、データではなく熟練の社員の意見が重視されたり、 多くのデータをもっているのに活用の仕方がわからない企業もあります。 しかし、データは意味づけを定義すれば活用できます。EYではデータサイエンスやアナリティクスのチームがデータ活用のコンサルティングを提供し、大規模なシステム構築を伴わなくてもお客様側に大きなインパクトを出せます。SIer型のビジネスをせずともコンサルティングサービスが成り立つんです。 そして、今後IoT活用が進みそこから生成される大量のデータは人間が処理するのではなくAIが活用されます。それらの実現手段としてクラウド活用が欠かせませんがクラウド基盤であればセキュリティも重要になります。 さらに、企業間のデータ連携が進めば、基盤としてブロックチェーンの活用も欠かせません。
既存のIT資産も活かしながら先端テクノロジーを活用しビジネスとテクノロジーの変革をデータドリブンにアジャイルアプローチで成し遂げるコンサルティングの勝者はまだいない状態です。これらを同時に実現するコンサルティングこそが、EYのコンサルティングだと言われるように事業を推進していきたいです。
大森
他社でもデータやAIの活用は行っていますが、似たソリューションにはならないのでしょうか?
田畑氏
大規模なシステム開発・運用を主軸とした組織では、先端テクノロジーやデータを活用するプロジェクトだけでは、その大量の人員を養うことはできません。そのため、あくまで事業の本流はマンパワーが必要とされる従来型のビジネスモデルと言えます。 EYSCでもSAPの様なシステム導入を伴う案件は重要であり携わりますが、システム導入自体の規模の大きさにこだわるのではなく、あくまでもEYの強みが発揮できるグローバルにビジネス変革をご支援できるのかを重視しています。また、私たちは、企画・構造フェーズをクライアントの立場に立って推進することに強みを持っています。その後の構築フェーズを必ずしも担う前提ではないので、システム導入を大規模化する力学が働きにくくクライアントの立場に立ったコンサルティングを実現できています。
大森
お話を聞いていると、ITコンサルティング業界は大きく変わっていくと感じます。どのように変化していくと思われますか?
田畑氏
大企業におけるITの活用の仕方は変わっていくと思います。従来のシステム刷新型のコンサルティングではなく、データ活用型のコンサルティングに移行する流れは加速するでしょうね。 また、自社用にシステムを開発するという考えはなくなっていくとも考えています。現在エンタープライズ向けのクラウドでシェアを伸ばしているマイクロソフトを例に挙げると、その研究開発費は、2020年と2021年はそれぞれおよそ2兆円。このような研究開発を経て、クラウドサービスはどんどん進化しています。 そんな状況で、企業の1社1社が数千万円~数億円のシステム開発をするのではなく、合理的に自社に合うクラウドサービスを組み合わせて使用し、業務を合わせていく形にシフトしていくと考えています。
大森
ほかのBIG4と比較した、EYSCならではの特徴はありますか?
田畑氏
特に今は個人と組織が共に急激に成長していることを実感できるフェーズにあることが、EYSCのテクノロジー組織の大きな特徴ではないでしょうか。これはキャリアにおいて何度も体験できることではないです。 現在、EYSCのテクノロジーコンサルタントはファミリーのような規模感です。よくメンバーにも話しているのは、「誰がジョインするかで、会社の2、3年後が変わる」ということ。それだけ個人が組織に与えるインパクトは大きいです。 そして、デジタルトランスフォーメーションを実現する上で不可欠な5つの分野の専門チームがひとつの組織にコンパクトにまとまっていることも特徴です。 これからのテクノロジーコンサルティングにおいては、これら5つの領域をすべて手がけるべきと考え、連携を図っています。
また、EYSCはスタートアップの雰囲気がありながらも、グローバルではすでにEYブランドが確立されていて、かつグローバルとの連携が活発であることも特徴です。
ビジネス変革に興味をもち、本質的な仕事をしたい人を求めている
大森
今後の展望について教えてください。
田畑氏
マーケットで存在感を発揮するにはまだまだ規模が足りないので、数年以内に現在の3倍ほどの人員まで拡充させていきたいです。そして、従来型のIT導入プレイヤーとしてではなく、「DXならEY」と言われる、質やサービスの面で選ばれる会社でありたいですね。 また、エッジの立った独自サービスも生み出していきたいです。たとえば、EYのグローバルでは税務業務を行う『EYグローバルタックスプラットフォーム』というサービスがあります。 日本のEYではこうしたマネージドサービスがまだ十分には展開できていないため、積極的にサービス化していきたいと考えています。
大森
どのような人材を求めていますか?
田畑氏
テクノロジーが好きであることをベースに、ビジネス変革に前向きで関心が高い人がいいですね。 コンサルタント経験者のなかにも、先ほどお話ししたような業界の矛盾を感じ、「この仕事がクライアントの役に立っているのか。このままでいいのだろうか」と違和感をもっている人もいます。 また、ITの実装をしているエンジニアの中にも、「クラウドの時代に、この実装は本当に必要なのだろうか?」と疑問をもっている人もいるでしょう。 これからはノーコーディング、ローコーディングになり、実装のみのキャリアではスペシャリストとして長いキャリアを歩むことは難しい可能性があります。 ITが変化していく中で自分のキャリアに不安をもっている人にとって、キャリアチェンジのよい機会になるのではないかと思います。
専門性としては、SAPやマイクロソフトのソリューション、データアナリティクスやサイバーセキュリティ、デジタルのスキルや知見がある人を求めています。 また、テクノロジートランスフォーメーションに業界を掛け合わせた知見をもち、特定業界ならではのITの使い方や問題点に精通している人にも是非ジョインしていただきたいですね。
大森
こうした人材に来てもらうために、手がけている施策はありますか?
田畑氏
会社の成長と個人の頑張りが給与に直結するように、若手の年収レンジの見直しを行いました。利益のある仕事をして給料に反映されるようにしたことで、若手の平均年収が大きく上がっています。 また、人事の評価制度についてもどんどんブラッシュアップをしています。他社の制度なども参考にしながら、それぞれの仕組みのいい面を組み合わせ、見直しをしています。
大森
各社の人事制度のいいとこ取りをして成果がきちんと評価として反映されるという点は、EYSCへの転職の検討されている方には知って頂きたいポイントですね。
構成・編集:久保佳那 撮影:赤松洋太