FPTコンサルティングジャパン株式会社
FPTコンサルティングジャパン株式会社の代表取締役社長のグェン・フゥ・ロン氏は、自社について「常にグローバルで働いていることを実感できる」と語る。 自身のキャリア、FPTコンサルティングジャパンの特徴、活躍している日本人社員について話をうかがった。
INDEX
日本との縁を感じて留学したことがすべての始まりだった
大森
キャリアのターニングポイントを教えてください。
ロン氏
一番のターニングポイントは、ベトナムの大学を中退し、日本に留学したことです。ほかに、ドイツやオーストラリアなどの選択肢もありましたが、日本との縁を感じました。 日本を選んだ理由のひとつは、様々な分野で世界有数の技術力を持っていたからです。 また、いくつか受けた留学試験の結果が一番早く出たのも日本でした。 1998年にまったく日本語を話せない状況で来日。1年間は日本語学校に通い、寝る間も惜しんで勉強しました。その後、東京大学に入学。 当時は、東大出身の起業家がスタートアップを立ち上げて話題になっていた頃です。私自身もスタートアップでアルバイトをしたり、日本法人のベトナム支社立ち上げを手伝ったり、外資系ファームで働いたりという経験をしました。
大学卒業後の進路に悩みましたが、最終的に「ベトナムでIT産業のパイオニアであるFPTが日本法人を立ち上げる」と知り、2005年末にジョインしました。 外資系ファームに行くか最後まで悩みましたが、大手ファームに行ったら折衝する担当者は課長やリーダー層になります。FPTならば、経営層に接する機会があるので、自分の成長につながるのではと考えて決意しました。 その後、FPTは成長を続け、今ではベトナムで2万2000人(FPTソフトウェア)、日本では2000名弱の組織へと拡大していきました。 そして、2019年にコンサルティング部門であるFPTコンサルティングジャパンを立ち上げ、今に至っています。
正解のないDXを実現するためには、自由度の高い環境でトライできることが欠かせない
大森
FPTコンサルティングジャパンの強みを教えてください。
ロン氏
当社の強みは、2つあります。 1つは真のダイバーシティを知れる環境であること。FPTは世界26カ国でビジネスを展開しています。特徴は国の単位で縦割りするのではなく、サービスやソリューション、業種のカットで、グローバルにつながっていることです。 そのため、本社のベトナムだけでなく、世界中の支社の社員との連携があります。 こうしたグローバルの強みを生かして、日本の企業に合う日本にはないソリューションを提供できます。 2つめは、DXを実現できる企業であることです。DXという言葉が聞かれるようになって久しく、さまざまなファームでノウハウや実績があります。 しかし、日本にはDXを語れる企業は多いですが、実現できる企業はまだまだ少ないのが現状です。 その理由として、日本は島国の特性があり、オープンマインドで物事を進めたくても、なかなか決断できない傾向があることです。さらに、DXを実行できるエンジニア人材の不足も影響しています。 その点、当社はグループ会社に多くのエンジニア人材がいるため、コンサルティングだけでなくDXの実現までが可能です。
大森
確かに、日本ではテクノロジー人材が枯渇しています。御社はベトナムも含めてテクノロジー人材を多く抱えていますね。
ロン氏
デジタルの世界では何が正解かわかりません。そのため、DXを実現するには自由度の高い環境で、オープンイノベーションにトライできることが重要です。FPTは正にそれを実現しています。 例えば、ベトナムでデジタルに特化したFPTデジタルという会社を設立し、オープンイノベーションにトライしています。クライアントにコンサルティングを提供するだけでなく、クライアントと企業をつくり一緒にチャレンジすることもあります。 こうした環境が実現できるのは、「Execution is everything(やってみることがすべて)」という精神が根づいているから。失敗してもいいからトライすることを重要だと考えています。 一般的なコンサルファームでは、人事や上司がアサインを決めることが多いですが、当社では社員自ら手をあげてやりたいことを実践しています。
大森
日本とベトナムは親和性があるのでしょうか?
ロン氏
DXは“D=デジタル”の部分に焦点が当たりがちですが、肝心なのは“X=トランスフォーメーション”だと考えています。課題の解決策が必ずITソリューションの導入になるとは限りません。ITソリューションを導入して業務を“デジタル”化することにとどまらず、ビジネスをどのように“トランスフォーム”していくか、DXの本質はそこにあると考えます。 私たちは、ITに強いシンプレクスグループだからこそ、実効性の高いDXを追求することができますし、またシンプレクスとは敢えて別法人にしているからこそ、ITソリューションの導入に捉われすぎない本質的DXを加速させていくことが可能です。
大森
御社を選ぶクライアントからは、どんな点が評価されていると思いますか?
ロン氏
親日国として、台湾やタイなどをイメージする人が多いと思いますが、ベトナムも親日国のひとつです。私自身、幼いころから身近に日本製の電化製品がある環境で育ちました。現在は私の家族も日本にいますが、非常に生活がしやすく親和性が高いと考えています。 また、FPTが日本法人を立ち上げたばかりの頃にも、多くの日本企業からチャンスをもらい成長の機会をいただきました。
結果を出せば数ヶ月で次のポジションに昇進できる、ピラミッドのない組織
大森
他のコンサルファームと比べた、FPTコンサルティングジャパンで働く魅力を教えてください。
ロン氏
FPTで働く魅力は3つあります。 1つは、成長スピードが早いため、ポジションがまだまだ空いていることです。ベトナムのFPTは年3割、3年で2倍のペースで成長を続けています。 FPTでは結果を出せば数ヶ月でも次のポジションに上がります。社長の僕より稼いでいる社員もいるほどです。 2つめは、中途入社の社員で構成されているので、中途入社の方が疎外感を覚えにくいです。新卒入社のプロパーの比率が高い大手ファームに転職した場合は、ある程度のポジションで中途入社した人は疎外感をおぼえることもあるでしょう。 しかし、FPTでは中途入社の社員が経営のボードメンバーになっているくらい、入社の時期に捉われていません。新たな人材は会社の成長のチャンスにつながると考えているからです。 3つめは、グローバルに仕事をしていると実感できること。当社はアメリカやUK、フランスなどの海外支社があり、連携の機会も多いです。ベトナム本社とのコミュニケーションは英語なので、日常的に英語を使います。 グローバルに仕事をしたいと思って外資系ファームに入社したのに、実際はなかなかグローバルを実感できないと感じている人には魅力に感じていただけるでしょう。
大森
FPTグループでは、女性社員も活躍されていると聞きました。
ロン氏
FPTグループの経営層の半数は女性です。当社は「ダイバーシティ」という言葉を使わないのですが、その理由は意識して使わなくてもいいほど、多様性を大事にする風土が根づいています。 日本人社員が驚くのは、保育園に子どもを迎えに行った女性社員が、子ども連れで会社に戻ってきたりすることです。お母さんが仕事をしている間は、若手社員が子どもと遊んであげる光景も見かけます。 また、ベトナムには女性をうやまう「女性の日」があります。この日は毎年社内でイベントを開催。オフィスを飾ってステージやビュッフェを用意します。社員は写真撮影をしたり、社内バンドの演奏をしたりとイベントを楽しんでくれています。 当社は女性が働きやすい環境なので、女性の方にもぜひジョインしていただきたいです。
大森
求める人物像について教えてください。
ロン氏
グローバルやデジタルというキーワードに関連する幅広い方が対象になります。 常々思っているのは、日本はグローバルでトップを維持していて、日本人は強い精神をもっているにも関わらず、チャレンジしにくい環境におかれていることです。 そのため、環境次第でさらにチャレンジできるし、難解なミッションにも立ち向かうポテンシャルをもっています。 そんな方々が、トライ&エラーが当たり前である当社に入社したら、能力が引き出されるはずです。 日本では、次のキャリアへの影響を恐れてトライしたくてもできないこともあるでしょう。しかし、当社では失敗は当たり前のことで、リスクとは捉えていません。「失敗しても次がある」と考えているので、社員は失敗を恐れずにチャレンジできます。そんな環境で働いてみたいと考える方を歓迎します。
大森
活躍している日本人の方はいますか?
ロン氏
特に活躍している人を2人紹介します。 1人は2020年3月にマネージングディレクターとして入社した社員です。経験を生かして戦略だけでなく実行にも携わり、新たなビジネススキームを生み出しました。 会社としてひとつの事業を任せることを決め、現在は本社の経営ボードのメンバーになっています。 もう1人はマネージャーとして2021年5月に入社した社員です。クライアントの信頼を勝ち取り、20名のメンバーをリードし、今度も領域の広がりを期待されています。現在はシニアマネージャーになり、年収も1.5倍ほどになりました。 このように、当社では「このポジションを何年か経験しないと次にいけない」という縛りがありません。組織のピラミッドがなく、チャンスは皆に平等です。 また、日本人社員からは、「既存社員に声をかけられ、いい意味で巻き込まれる」という話をよく聞きます。新しいメンバーを巻き込んで一緒にやるというコラボレーションが自然に生まれる環境です。 ベトナム人社員も日本のオフィスでは日本語で会話をしていますので、言葉の壁もありません。
大森
課題や今後の展望を教えてください。
ロン氏
課題とチャレンジばかりの状況で、言い換えればポテンシャルしかないと思っています。 ベトナムのGDPは非常に高い成長を続けていて、FPTも成長したいというやる気のある人が集まっています。 新たなことや経験のない領域にも常にチャレンジしていくので、オープンに外部企業と交流し、コラボレーションを進めていきたいと考えています。 実際に、競合にあたるようなコンサルファームとの協業なども行っています。
大森
成長に前向きな御社らしい、垣根のないビジネスを進めていかれるのですね。
構成・編集:久保佳那 撮影:赤松洋太