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株式会社NTTデータ経営研究所

代表取締役常務 浦野氏は、同社について「省庁への政策提言や、民間での成果を政策側に環流できるポジションであることが特徴だ」と語る。
そして、総合ファームでの経験をもつ野中氏は、「社会を変えていく種になりそうな、新たなことに触れられる会社だ」と語った。お二人のキャリアや、同社の特徴、求める人物像などをうかがった。

インダストリーやサービスラインのメッシュがなく、さまざまな領域に関われる

大森

お二人のこれまでのご経歴や、キャリアのターニングポイントについて教えてください。

浦野氏

NTTに入社し、まず社会インフラとして重要なミッションクリティカルなデジタル交換機の大規模ソフトウエア開発を経験しました。
その後、経営企画部門で戦略系コンサルティングファームの方々と仕事をする機会があり、NTTデータのコンサルティングビジネスユニットに公募で異動しました。当時は小さな組織で、IT戦略策定やCIOサポートなどからコンサルティングを始め、大手電機メーカーや製造業のサプライチェーンのプロジェクトで修行していました。今思うと若かったですね。

次に経験したのが、キャリアのターニングポイントとなった世界的製造業の”グローバルBIプロジェクト”です。NTTデータがグローバル化を本格化した2000年代初期の頃で、当時はグローバルプロジェクト自体が珍しかったです。
具体的には、ある製品カテゴリの販売、在庫、生産情報を世界中で見える化し、週次の需給調整業務を標準化することで、サプライチェーンの最適化をグローバルで実施するというプロジェクトでした。

コンサルティング段階の構想策定からテクノロジーの実装までを一気通貫で担当したのですが、工程分担が当たり前の当時としては珍しく、今風に言うとDXのアジャイルプロジェクトでした。米国、ブラジル、ベルギー、上海、東京にまたがるグローバルプロジェクトで、コンサルタントが業務設計を行い、エンジニアが世界の優れたテクノロジーを活用し、業務を変えながらアジャイルで見える化の仕組みを構築しました。

その後は、「サプライチェーン×見える化」を自チームのコンサルテーマとして、事業を拡大していきました。当時、NTTデータはM&Aを繰り返していたので、欧州、米国、アジアのグループ会社でBI&Analyticsをテーマにした組織を横串でバーチャルチーム化しリードしたこともあります。その後はインダストリー側の責任者として流通・小売部門で日本を代表するアパレルやコンビニのお客様を担当した後、法人・ソリューション分野での事業戦略、経営管理、M&A、PMI、人事戦略等を経験し、直前は、NTTデータ自身の全社DX施策の責任者を経て、今に至ります。

野中氏

金融系のシステムエンジニアとしてキャリアをスタートし、銀行の外為、決済系の仕事に携わり、その後ネットワークエンジニアとして、グローバルネットワークの再構築にも関わりました。

コンサルタントとしてキャリアチェンジしたのは2000年頃です。外資監査法人系ファームの金融部門にマネジャーとして転職し、オペレーション・組織変革、会計システムの導入、新規銀行の立ち上げ、海外現地法人の統合など、さまざまなコンサルティングを経験しました。
金融業界を一通り経験し、幅広い業種の事業会社のコンサルティングを経験したいと考え、同社の戦略系部署へ異動を経て、グローバルITカンパニーのコンサルティング部門に転職、製造業やサービス業などの様々プロジェクトを経験してまいりました。その後2015年に当社に転職し現在に至ります。

大森

野中さんが御社に転職された理由を教えてください。

野中氏

大手の総合ファームは、インダストリーやサービスラインで担当する領域の制約があることが多いと思っています。お客様にさまざまな改革を提案していきたいと思うと不自由に感じることがありました。自組織の担当領域に提案が限定されたり、個人的にお客様と信頼関係を結んで相談を受けた案件でも該当領域の担当部署に案件を引き渡さなければならなかったりすることもありました。
その点、NTTデータ経営研究所は、インダストリーやサービスラインでの組織毎の制約がほとんどなく、極端に言えば、きちんとデリバリー出来るのであれば、誰に何を提案してもいいところが魅力でした。
元々、シンクタンクとコンサルティング会社の要素が合わさって成り立っているという背景もあり、さまざまなタイプの人がいて、幅広い仕事ができます。

公共と民間を融合してデリバリーできるコンサルタントを育成していきたい

大森

インダストリーやサービスラインの区分がないのが、御社の特徴だとうかがいました。そのほかの特徴や、他社との違いを教えてください。

浦野氏

最大の特徴は、国の施策になる前の政策提言を中央省庁に対して行っていることです。省庁に対して、実用化前の未来の話を政策提言し、特定の地域で実装してみてその評価検証をフィードバックし、後に社会課題の解決に活かすということを繰り返しています。
一方で、民間のプロジェクトで実施している、例えば顧客接点の高度化等の最先端の取組みを、国に提言する動きもしています。

我々は、これらを「ソーシャル&ビジネスデザインサイクル」と呼び、当社のビジネスコンセプトとしています。
このように、国に提言した政策を民間側に活かしたり、逆に民間側での成果を政策側の提言に環流できるポジションであることが、当社の特徴です。
もう一つの特徴として、シンクタンクとしての素地もあるため、いわゆるコンサルティングプロジェクトだけではなく、国が政策を意思決定するためのリサーチに近い仕事も多くあります。

大森

具体的には、どのようなプロジェクトがあるのでしょうか?

野中氏

国から民間側という点では、環境省の日独連携プロジェクトでドイツの先進的な政策を学び、そこで得た知見を活かし、実際の国内のビジネスにおいて、地域エネルギー会社の設立に繋げていったような例があります。

民間側から国という点では、例えば二国間クレジット制度という仕組みがあります。海外で日本のテクノロジーを使って、CO2を削減しシェアする仕組みです。こちらの海外へのインフラ展開のプロジェクトを多数実施し、そこで得た経験値・ノウハウを日本の海外インフラ展開の政策にフィードバックするというような例があります。

大森

新しいテクノロジーに係るコンサルティングも大変多いと伺っておりますが、そのあたりどのような案件に携わられていらっしゃいますか?

浦野氏

一例としては、ローカル5Gを活用して、地域の農業の活性化をするプロジェクトなどがあります。さまざまな場所にセンサーを付け、リアルタイムで遅延なしにデータを収集して分析するために例えばローカル5Gが必要だったりします。一方で、地域の課題に対してテクノロジーを使ってどう解決していくか?という点はコンサルタントの腕の見せ所です。
NTTグループのバックボーンがあるので、こうした最先端のテクノロジーを活用しやすい利点はあります。

野中氏

5Gは旬のネタでどこのファームでも5Gを活用する未来の姿を提案していますが、当社の場合は、次の規格や、そのさらに次の規格ではどのようなテクノロジー要素やビジネス戦略が求められるかを、研究機関とともに探求したりしています。海外に行き、現地の通信会社と情報交換をしたり、未来の姿を描いたりする仕事なども当社で請け負っています。
こうした、テクノロジーが未来を創造する段階に関われることは、誇らしいと感じます。

しかし、新しいテクノロジーに関わるコンサルティングに携われるかわりに、関与するメンバーは日々勉強する必要があります。通信テクノロジーや新しい半導体の製法のような話があり、どう活用するかを考えるときには、ある程度そのテクノロジーについても突き詰めて理解する必要があるからです。時には高校・大学の教科書をもう一度読んで学んだりすることもあります。

とはいえ、社会を変えていく種になりそうな新たなことに触れられるのは、他のファームにはない特徴だと思います。

大森

NTTのケイパビリティやテクノロジーを使って、実証実験ができる点は非常にユニークですね。
総合ファームでも公共系の案件はありますが、中央省庁の内部のシステム構築案件などが中心で、なかなか新たな社会的インパクトを創出しくことまでは踏み込めないことが多いと思うので、大きな特徴ですね。
シンクタンク系のファームとの違いはいかがでしょうか?

浦野氏

NTTデータのグループ会社なので、調査や提言だけで終わらずに実装まで伴走することも可能です。我々はお客様の業務側の定着支援で成功まで伴走する場合もありますし、あるユニットはPMOとしてシステム実装のマネジメントで入る場合もあります。
さらに言えば、NTTグループのリソースをあるときは活用しながらお客様に価値を提供できますし、時にはNTTグループのプロジェクトをやる場合もあります。後ろに抱えているリソースが大きい点が特徴です。

大森

コンサルティングファームに興味を持っている方だと、同じNTTグループのクニエさんと比較されることもあると思います。どんな違いがありますか?

浦野氏

コンサルティングファームという意味では、同じグループ内にクニエと経営研があるように見えるかも知れませんが、ほとんど重複はしていないのですよ。私がNTTデータのコンサルティング部門に居た頃は、むしろクニエと一緒に仕事をすることが多かったです。

経営研はやはり国の政策提言に強く、政策提言するときにはさまざまな知識が必要になるため、インダストリーやサービスラインの専門性に加えて、総合的な知識をもったコンサルタントを育成したいと考えています。

例えば、社会課題として環境問題に取り組むとしたら、サプライチェーンの最適化だけでなく、CO2削減のインセンティブの為のマネタイズの知識も必要です。業界だけの課題に限らないので、幅広く業界を知っていることが重要だったりします。

インダストリーやサービスラインに分かれたコンサル組織では実現できないレイヤーの仕事をできることが、最大の魅力です。

大森

たしかに、御社では脳科学や地方医療、遠隔医療などの社会性の高いユニークなテーマに取り組むチームがありますよね。

野中氏

他のファームでは、公共担当と民間担当のコンサルタントは明確に分かれていることが多いですが、当社の場合はそういった区別がありません。他社が公共と民間を分ける理由の一つは、おそらくコンサルタントに求められる素養が違うからでしょう。公共案件は発注要件がはっきりしていて、それを着実に実行することを強く求められます。一方、民間企業相手だと、言われたことだけをやるコンサルタントは正直物足りなく感じられることが多く、お客さまの気づかないことや、状況に応じて新しいアイデアを出していくのも価値だとされている。同じコンサルタントでもタイプが違います。

しかし、私のチームでは意図的に公共・民間のプロジェクト両方を担える人間を育成していこうとしています。
その理由は、複合的な社会課題が増えていて、どちらかの経験だけでは太刀打ちできないことが多くなってきているからです。様々なテーマが複合的に関係しあい、さらに地域というフィールドが掛け合わさって複雑な課題となっています。

また、企業の事業活動であれば、儲からなければ別の土地でやる、他の商売をするという選択肢もありますが、社会課題の多くは、特定の地域や産業領域で問題を解いていかなければならず、その土地や人たちから逃げ出すことはできません。

こうした課題を解くにあたっては国や自治体だけでなく、複数の企業、研究機関や大学、さらに市民団体等との連携も必要になります。公共・民間どちらかだけの経験では難しく、様々なことを経験していることが重要になってきます。

また一過性のプロジェクトとしてではなく、ある程度中長期的な視点や取り組みも必要になってきます。そういった点でも、NTTデータグループ/NTTグループの一員である当社は、採算性の観点から他のファームでは難しい社会課題にも長年取り組んできております。
例えば現在話題になっている、環境問題や地域創生について、環境問題に関しては地球温暖化対策やESG投資・SDGs経営支援など、地域創生に関しては人口動態対応やコミュニティデザインなど、当社は10年以上昔から研究や実プロジェクトを実施してきております。

大森

公共と民間両方を経験することは難易度が高く、最初からなかなかできないと思うのですが、アサインメントの工夫や教育など、取り組んでいることはありますか?

野中氏

アサインメントはユニットのポリシーによって違いますが、私のチームでは、入社したら、まず本人の希望ややりたいことを聞くようにしています。しかし本人の趣味嗜好だけを聞いているだけでは幅が狭くなりがちなので、様々な経験が出来るように考えながらアサインしています。

例えば公共を担当したら次は法人、法人でもベンチャー気質の企業もあれば、次は財閥・重厚長大系などといったトラディショナルな企業、中長期のビジネス機会の検討もあれば、比較的短期でのコスト削減など、様々な仕事、お客様、あるいはプロジェクトマネージャと一緒に働き、経験値を増やしていってもらっています。

若手のうちは、自分がやりたいことが見つかっていなくてもおかしくないのですが、昨今のメディア等の影響からか、「早く専門性を持たなければ」、「早く明確なキャリアプランを立てなければ」と焦っている人が多いように感じます。若手の方は様々な経験をする中で、いつの日か自分にあった仕事や、興味のある領域を見つけていってもらえればいいと思っています。その為にも、様々なタイプの仕事を提供することこそが、当社が社員に提供できる最も重要な価値ではないかと考えています。

浦野氏

私自身、大規模システム開発で品質やプロジェクトマネジメントの重要性を知った上で、経営企画を経験し、その後はコンサルタントとしてIT戦略や組織論を学び、業務コンサルを経験した後、アナリティクスで経営管理の見せ方・考え方をお客様に提供し、さらには事業サイド側の経験としてM&Aや自社の事業戦略策定やその実行管理、業務改革も経験してきました。
こうした経験を社員には伝えていきたいですし、当社では複合的な経験をしていないと担当できない案件が多いのです。

基本的なコンサルタントとしての思考の軸やプロジェクトの進め方、お客さまへの接し方はきちんと教育しています。
また、リサーチという文化がある会社なので、徹底的に調べて仮説検証しながらプロジェクトを進める癖をつけていくと、ある程度のところまでは必ず到達できます。

大森

アサインメントの柔軟性を担保するファームはありますが、ベンチャーファームであることが多いです。
御社はNTTグループの総合力があり、専門性もある。国とのつながりがある中で、アサインメントを選択できる点がユニークですよね。他にも特徴的な点を伺えますでしょうか。

浦野氏

例えば、私が着任してから、世界の有名ビジネススクールのDX研究の第一人者たちとの議論を始めています。流行りのDXは言葉が独り歩きし手段としてのデジタルに目が行きがちですが、本来は企業の業態変革です。特に伝統のある大企業での本質的なDXのインパクト、つまり組織構造、ケイパビリティ、マネジメントの方法、リーダーシップ等については世界でも象徴的な成功事例がまだ少ないが故に、研究のやりがいがあると思っています。これらを今後日本のお客様に展開していきたいと思っています。

野中氏

あと、当社の特徴として、大学との連携の強さが挙げられます。
産官学連携プロジェクトは相当数行っていますし、先ほど浦野がお話ししたように、海外の大学教授とのネットワークを、経営トップがリレーションをつくって取り組んでいたり、私自身も国内の大学でMBAの授業を担当していたりします。
さらに、共同研究も大学と進めていて、私のチームでも、5人ほどのメンバーが研究員になっています。

こんな風に、コンサルタントのキャリアもさまざまです。
一般的なコンサルタントのキャリアは、ファームで懸命に働いて数字を上げて、プロモーションしていくか、どこかのタイミングで事業会社に出ていくかだと思いますが、もっと多様なキャリアがあっていいと考えています。

当社のコンサルタントは、大学での活動に興味を持つ人も多いです。兼任でさまざまな研究に関わり、個々のキャリア志向に応じて、活動の軸足を移していってくれてもいいと思っています。

浦野氏

当社に来て驚いたのは、大学の研究員や客員教授などの複数のタイトルをもっているコンサルタントが多いことです。

大森

その背景には、アサインメントの多様性やキャリアの広がりを求めている環境があるのでしょうね。

堅いイメージをもたれがちだが、それが信頼性、誠実さにつながっている

大森

御社に対して、良くも悪くも少し堅い社風ではないかと思う人が多いようです。実際のところはいかがでしょうか?

浦野氏

堅い社風に見えるかもしれないですし、お客様からは「行儀が良すぎるねぇ」とお叱りを受ける事もありますが、裏を返せば悪い人がいないのですよね。「売上や利益をあげれば後は何でもいい」と考えているような人は組織の文化に合わないですし、定着しません。
先日、ある著名な方と議論した時にその方が仰っていたのは、戦略経営は20世紀の古い経営だと。さすがに戦略が無いのが良いとは私は思いませんが、結果指標である業績だけのマネジメントや評価は古いですし社員も人としての成長を実感できないでしょう。
一方で、働き方の制度は一通り揃っていて、リモートでもサテライトオフィスでも働く場所はどこでも良いし、必要なコミュニケーションを取って知的コンバットを仲間としたいときはオフィスに来て徹底的に知的生産性を上げればいい。皆さんが思うより堅くはなく、働きやすい社風だと思います。

野中氏

社名に「NTT」や「研究所」と入っていますので、堅い印象を持つ方もいるかもしれないですよね。
しかし、私はこの堅さが信頼感にもつながっているのでは思います。国や自治体様から様々な相談を受けたり、各種研究機関からも新しい技術の活用などに関して様々な相談を頂いております。
先ほどフィールドに縛られているというお話をしましたが、当社・当社グループも、良くも悪くも、この国から逃げ出さない、日本の為に最後まで働くよねという印象を持ってもらえていると感じます。

大森

最後に、求める人物像についても教えていただけますか。

浦野氏

社会課題の解決や、目的が明確な自己実現など、自分なりの目的意識をもっていることに加え、人として正直で周囲とコミュニケーションをとり、チームワークを大切にしてくれる人を求めています。
人の成長にも貢献し、会社という組織を利用して、自分も成長したいって思っている人がいいですね。成長環境については、これまでお話ししてきたようにいくらでも提供できます。

大森

さまざまなことにチャレンジしたい人に合う環境ですね。

左から:弊社大森 NTTデータ経営研究所 浦野氏、野中氏

構成・編集:久保佳那
撮影:赤松洋太

※本記事の内容はすべて取材当時のものです。