株式会社リブ・コンサルティング
中堅・ベンチャー企業へのコンサルティングという市場を切り拓いてきた、株式会社リブ・コンサルティング。執行役員CHROである武山氏は「経営者と同じ視座で悩みを抱えながら、プロジェクトのお題や要件にとらわれず、この会社が生き残るにはどうしたらいいかを常に考えられるのが醍醐味」と語る。 武山氏のこれまでのキャリアやCHROに就任した経緯、リブ・コンサルティングの特徴、今後の展望についてうかがった。
INDEX
BCGでのコンサル経験、ファーストリテイリングの人事経験を生かせると考え、リブ・コンサルティングのCHROに就任
大森
武山さんのこれまでのご経歴と、キャリアのターニングポイントを教えてください。
武山氏
海外育ちだったこともあり、「グローバルに活躍する人材になりたい」と三菱商事に新卒で入社しました。3年目になった頃、プライベートで精神的なダメージを負う出来事がありました。1、2ヶ月たっても復調しなかったため、思いきって環境を変えて仕事に没頭しようと考え、ボストン コンサルティング グループ(以下BCG)に転職します。 BCGを選んだ理由は3つあります。1つはグローバルという軸を大事にしていたこと。2つめは大手商社から外資系コンサルティングファームへの転職なら、周囲をアッと言わせられるキャリアではないかと考えたからです。当時は若くてプライドも高かったですね。3つめは仕事に没頭したかったので、業務がハードなコンサルティングファームがいいのではと思いました。
大森
商社と戦略コンサルティングファームでは、働き方の違いがあったのではないでしょうか?
武山氏
違いは大きく、入社して1年ほどは本当に大変でした。商社では3年目の若手で、上司や先輩の指示やオーダーを正確に理解し、すばやく正確に実行することが求められていました。イレギュラーやトラブルがあっても、過去事例を先輩に聞いて解決策を確認するなど、答えややり方はどこかにある環境だったのです。 一方、BCGではプロジェクトの大きなお題や課題認識はあるものの、どう解決していくかは誰もわからず、むしろ解決していくことが仕事でした。それは入社1年目のコンサルタントであっても変わりません。 大企業特有の働き方しかできない私に対して、「そのままではダメだよ」という周囲からのフィードバックが絶えずありました。自分で答えらしきものを探し出す仕事がなかなかできず、辞めようと考えたこともあります。 どうにか乗り越えたいと1年ほどもがく中で、クライアントや業界、テーマにも詳しくなってきて、徐々に理解できることや自信を持てることが増えていきます。少し勇気を出してリスクを取れるようになり、チームがいい方向に向かっていく経験を積み重ねることができました。すると、答えがでなくても一歩踏み出せる勇気がわいてくるようになり、「コンサルタントの働き方はこういうものなのか」という実感がもてるようになっていきました。 その後、結婚して子どもが生まれるタイミングのときに、子どもとの時間のプライオリティが上がった瞬間がありました。私は母子家庭で育ってきたので、自分が病気や事故で死ぬかもしれないと考えたら、子どもに自分の生きざまを焼き付けたいなと思ったのです。BCGでの仕事は非常に充実していましたが、子どもとの時間をしっかり取ることと両立は難しいと考え、6年ほど在籍したBCGを辞めました。
次に選んだ仕事は、ファーストリテイリングの人事でした。同社での思い出は、一にも二にも日本の生んだ偉大な経営者である柳井正です。 私は面接の場で、2度柳井社長 から怒られています。1つめは「コンサルをやっていて、将来は経営者になりたいので、人事にもチャレンジしたい」と伝えたところ、「本当に経営者になりたいんだったら、今すぐコンサルなんて辞めてくださいよ」と怒鳴られたのです。 柳井社長 はコンサルを否定したわけではありません。「経営において戦略は大事で、目標を実行する筋道を立てることも非常に重要です。しかし、やることの難しさや醍醐味を理解した上で、計画や戦略は立てていかないといけない。双方は絶えず行き来して変わっていくものだから、片方だけをやっていても経営者にはなれない」と言いました。 2つめは、人事経験のなかった私が、付け焼刃の知識を披露しながら「経営にとって、人事は大事ですよね」と発言したときのことです。 「君ね!経営にとって人事が大事とかそういう問題じゃないんですよ!経営の半分以上は人事ですから。僕はね、人生の半分以上、人のことをやってきましたよ」と言われました。 どこの馬の骨ともわからない若造に真剣に向き合う柳井社長は、全ての人と向き合い、一瞬一瞬を本気で生きている人でした。
大森
その後、リブ・コンサルティングに転職された経緯を教えてください。
武山氏
柳井社長の薫陶を受けながら充実した日々ではありましたが、いつまでたっても追いつけない感覚をもっていました。枠組みを外れて、自分がどこまでやれるのか試してみたいという想いを抱くようになったのです。そんなときにリブ・コンサルティングのCHROのオファーをいただき、コンサルと人事を経験した自分に合うポジションだなと思いました。なにより、コンサルティングファームでは珍しく、人事の最高責任者であるCHROを募集した背景に興味をもちました。 というのも、コンサルティングファームにとっては人がアセットのすべてであり、採用は経営の最重要課題であるため、経営陣でHRの組織や人事の役割をすることが多いです。リブにおいても当初はそのように進めていました。しかし、組織が拡大し事業の幅が多様化していくなかで、事業成長をドライブするために、組織や人事の専門家を役員に招いて権限委譲するという考えに至ったのです。 その結果、コンサルティングにくわしい人事の専門家を求めていて、私にオファーをいただいたという背景でした。 その話を聞いた私は、コンサルティングファームのチャレンジとして非常に面白いと感じました。そして、ディレクションや指示のない中で、力を試したいと考えた自分のフェーズにもはまると考え、興味をもちました。
企業経営全体への理解、経営者の視座で物事を見ることが求められる
大森
リブ・コンサルティングの特徴についてうかがえますか。
武山氏
コンサルティング業界のパイオニアであると考えています。今まで市場として存在しなかった中堅企業を中心としたコンサルティングビジネスから始まっている点が特徴です。中堅企業の次はベンチャー企業、スタートアップと続いていきました。スタートアップに関しては資金的にも制約がある中で、その市場を切り拓いてきています。 我々は、ベンチャー企業と中堅企業と大手企業の三位一体のビジネスモデルという言い方をします。3つのセグメントにコンサルティングをしているだけではなく、それぞれに対して我々しか提供できない価値を提供でき、シナジーを生んでいます。 例えば、最近は大手企業に対して、新規事業開発支援やDX支援などを提供する機会が増えてきました。新規事業開発支援においては、我々が中堅やベンチャー企業と共にプロジェクトを行ってきたスピード感、アジャイルな業務の進め方をそのまま取り入れています。 また、さまざまな企業を支援していく中で、最新の世の中のサービスや技術、どんな芽が生まれているかをよく知るからこそ、ナレッジやノウハウとしてお伝えできることも多いです。新たな領域に優位性をもちながら挑んでいく、パイオニア精神のある会社です。
大森
中堅・ベンチャーにフォーカスしてきて、今後は大手も含めて領域を広げていくのですね。大手コンサルファームと競合することもあるのでしょうか?
武山氏
そういったケースも増えています。ただし、大手ファームが得意としている3ヶ年、5ヶ年の中期経営計画やM&AのPMOなどは、我々は必ずしも得意ではなく、大手の主戦場に打って出るわけではありません。新規事業開発やDXなど新たに生まれた領域には強みをもっているので、戦いを挑んでいます。
大森
中堅・ベンチャー企業にフォーカスする難しさはあるのでしょうか?
武山氏
難しさでもあり醍醐味でもありますが、企業規模が数十名~百数十名くらいのケースが多いため、ほとんどの企業でカウンターパートが経営者であり創業経営者であることも多いです。 プロジェクトのテーマや課題はありながらも、経営者にとって一番大事なことは会社全体の経営です。そのため、プロジェクトテーマだけでなく経営全体に対するアドバイスやサポートもしてほしいというニーズがあります。 つまり、リブ・コンサルティングのコンサルタントには、その企業の経営全体への理解や、経営者の視座で物事を見ることが求められるのです。 状況によっては、「Aというプロジェクトを進めていましたが、経営課題を考えるとAをやめてBから着手するべきではないでしょうか」と提言する必要があります。経営者の方々と対峙する難易度が高い仕事なので、コンサルタントの育成はなかなか難しいです。 しかし、経営者と同じ視座で悩みを抱えながら、プロジェクトのお題や要件にとらわれず、「この会社が生き残るにはどうしたらいいか」を常に考えられることが醍醐味でもあります。
大森
若手コンサルタントは、現場で汗をかいて悩みながら課題に対峙することで鍛えられていく。そこで鍛えられたコンサルタントたちが、大手企業に相対することになるのですね。
武山氏
その通りです。実態として、そこまできれいなキャリアパスはまだ描けていませんが、ひとつの育成モデルになっていくでしょう。経営の現場で実行してきたコンサルタントが、大手の事業開発支援のプロジェクトで働くと、お客様を訪問したり電話したりという行動が軽やかです。その結果、「ほかのコンサルティングファームとは一味違うね」と言っていただけることが多いです。
手触り感のある仕事がしたい、自社の組織や事業をつくりたいという志向の人が多い
大森
御社に興味をもつ方々の傾向はありますか?
武山氏
リブでは「“100年後の世界を良くする会社”を増やす」をミッションに掲げ、世のため人のために役立つ存在であることを明確にしています。額縁に入った掛け声ではなく、実務でもいかにミッションを実現するのかを考えながら、プロジェクトを提案しています。世のため人のためになりたい、人の喜ぶ顔が見たいというピュアな想いをもっている人が多い会社です。 また、実家や親戚が自営業をやっている人が多い印象があります。おそらく、中堅企業やベンチャー企業の経営者を間近に見てきたからこそ、助けたい、エンパワーしたいという想いをもって、リブの門をたたく人が多いのではないかと思います。
大森
大手コンサルファームから来る方もいますか?
武山氏
多くはないですが、増えてきています。志望動機としては、「手触り感のある仕事をしたい」「自分の仕事がクライアントや消費者、社会にインパクトを与えているのかをリアルに知りたい」という方が多いです。 ほかには、「リブの組織や事業自体をつくりたい」という方もいます。リブの場合、自分たち自身でどんなチームを作るのか、どんな事業をつくるのかも考える機会が多いです。 大手ファームは基本的にパートナーが案件を獲得し、PL以下の若手がデリバリーする体制ですが、リブは若手も案件を獲得できます。そのため、自分が興味のある領域や業界、テーマの案件を獲得してチームを編成し、組織にコミットできる点に面白みを感じている人もいます。
大森
案件の獲得については、目標なりKPIが設定されているのでしょうか?
武山氏
チームによって違いますが、1〜2年目から目標が設定されているチームもあります。この点はほかのファームとまったく異なり、私も入社したときに驚きました。 大手チームに配属された場合、案件を獲得する機会はあまりないのですが、ベンチャーや中堅企業のチームなら、若手も営業することがあります。 達成してしまえば後は自由に活動できます。別のチームの営業活動やプロジェクトを手伝ったり、現状はチームがない領域のセミナーを開催したりするメンバーもいます。 中堅やベンチャー企業向けのリブの強みのひとつとして、セールス&マーケティング領域があります。このように、自分たちもセールス&マーケをやっているからこそ、提案ができ成果も出せるのだと思います。
大森
チャレンジで失敗したときに、UPorOUTはないのでしょうか?
武山氏
まったくないです。一度仲間になったからには1人前のコンサルタントになるまでは責任を持って育てるという考えです。人によってスピードが違っても全員が成功して活躍できるように育成する文化や仕組みがあります。 具体的には、トレーナー・トレーニー制度があり、人によっては2〜3年トレーナーが付き、弱み・強み、キャリアや人生のゴールなども聞いていきます。そのうえで、「次はこんなプロジェクトにチャレンジしよう」「半年後にこんな異動ができるように頑張ろう」など、アドバイスをしています。 トレーナー制度によって、自分ができること・できないことを考える機会があり、トレーナーから客観的にアドバイスをもらうことで、PDCAを高速で回せます。個人の資質に任せない育成の仕組みとして、すぐれているなと驚きました。 結局、コンサルの成長はOJTが肝だと考えています。リブでは経営者と対峙する機会があり、成長せざるをえない環境に追い込まれることも含め、経営コンサルタントとしてレベルアップしていく環境が整っています。
自身の強みや興味・関心を生かしながら、新たな領域に旗を立てていける
大森
御社に興味をもっている人にメッセージをお願いします。
武山氏
当社はさまざまな切り口で新たなチャレンジをしていて、そのひとつが海外です。タイはすでに事業を展開していて、トップは日本人でそれ以外の従業員はすべてタイ人のメンバーです。東京大学に留学しているタイの留学生を採用し、彼らを日本で育ててからタイで働いてもらう取り組みもしています。 2030年までにアジアで立ち位置を築きたいというビジョンがあるため、タイ以外の国への進出も真剣に考えています。今後は、日本のベンチャー企業も海外に打って出ないと話にならない時代になっていくでしょう。そうなったときに、我々が海外進出していなければまったく説得力がありません。 もうひとつお伝えしたいのは、リブの強みを生かしながら、ご自身の強みや興味・関心を生かしながら新たな領域に旗を立てていける会社であることです。 例えば、旧態依然とした不動産業界を変えようという不動産テックの会社が増えてきています。我々はもともと住宅や不動産からスタートしているので、知見やノウハウがあります。一方、ベンチャーのテック企業の支援もしているので、その掛け算を生かすことが可能です。こうした支援のスタイルは、ほかのコンサルティングファームとは違う特徴です。
また、私もコンサルタントを経験しているからこそわかりますが、コンサルの仕事は非常に大変な局面もあります。そんなときに、大変だけど頑張ろうと思えるか、大変だからもう逃げたいと思うかの境目は、コンサルタントをしている目的が明確であるかだと思うのです。 例えば、高い年収や自分のスキルを高めたいという気持ちだけでは最後まで踏ん張れない。私自身もそういった気持ちでBCGに入ったので、それ自体を否定するわけではありません。 ただ、世界の貧困問題を解決したい、誰かの喜ぶ顔を見たい、お世話になった業界や企業のために頑張りたい、そんな気持ちがあると大変な局面でも踏ん張れる。だからこそ、そういった想いのある人はコンサルタントとして強いです。 コンサルティングの門を初めて叩く方は、世のため人のため、人の喜ぶ顔が見たいという気持ちが自分にあるかを一度考えていただけたらと思います。
大森
想いを持っている人の場合、必ずしも短期的にはビジネスになりにくい領域に興味をもっていることもあると思います。そういった領域でもやらせてもらえる環境なのでしょうか。
武山氏
短期的に見ると、社会的意義のあることと業績は矛盾するかもしれません。しかし、中長期的に見れば一致するはずですし、そうじゃなくてはいけない世の中になってきている。理想とそろばんのバランスを取りながらやっていくことが、我々が今まさにチャレンジしていることでもあります。 例えば、住宅・不動産業界をメインに手がける事業部では、地方創生をテーマにしたプロジェクトをどんどんつくっています。ビジネスとして成立させるのはとても難しいテーマです。しかし、こういったテーマに取り組んでいかなければ、日本の市場環境や人口の推移を考えると、不動産業界自体もシュリンクしていきます。 こういったテーマは中期的な研究開発や投資の視点で取り組んでいますが、最終的にはビジネスとして成り立たせる必要があります。そのあたりの時間軸やバランス感覚を理解いただけるなら、社会課題に興味のある方にもぜひ来ていただきたいです。
大森
意志をもってさまざまなチャレンジがしたい人には、とてもいい環境ですね。
構成・編集:久保佳那 撮影:赤松洋太