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EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社

テクノロジー・ストラテジー&トランスフォーメーションユニット(以下TST)をリードするパートナーの忽那氏は、組織の特徴について「ビジネストランスフォーメーションとテクノロジートランスフォーメーションの両輪を実現する組織だ」と語る。また、ディレクターの津屋氏は自身のプロジェクトについて、「お客様とワンチームのような一体感がある」と言葉をつないだ。両氏のキャリア、TSTの特徴、EYのカルチャーについて話をうかがった。

キャリアのターニングポイントは、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社に入社したこと

大森

お二人のこれまでのキャリアとターニングポイントについて教えてください。

忽那氏

新卒で、物流やECを主流とするベンチャー系のSIerに入社しました。2、3年仕事を経験していくうちに、金融系のシステムに関わりたいと考えるようになります。ミリセックの速さが求められ、システム上で決済までも完結する金融システムに魅力を感じたのです。高い性能や耐障害性が求められるシステムに携わり、プレイングマネージャーかつアーキテクトとして経験を積みました。
その後、よりお客様の近くで上流工程を経験したいと考えた私は、プラントエンジニアリングの会社に転職しました。一般的な印象とは異なりますが、エンジニアリング企業はプラント建設そのものを手掛けるわけではなく、プロジェクトマネジメントに長けた会社なのですよね。例えば、マレーシアでプラントを建設する際は、専門の機械をアメリカなどの海外から船で輸入するのですが、船便なのでスケジュールに乱れが生じやすいのです。さらに、現地に到着後の土木作業員を手配したり、大型機械をトレーラーで運ぶ段取りをしたりする必要があります。そのような不確実性が高く難易度の高いプロジェクトを設計して提案する、完成まで推進するという点で、システム開発そのものは手掛けないTSTのコンサルティング業務と共通点がある経験でした。 ターニングポイントになったのは、2011年にEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社に入社したことです。当時は70名弱の組織でした。テクノロジー系のチームが組成されたのが2012年で、IT系コンサルや監査法人の方々とコラボレーションしてのリスクコンサルなど、幅広いプロジェクトを担当しました。 現在所属するテクノロジー・ストラテジー&トランスフォーメーション(TST)が確立されたのが2020年頃で、その後はユニットをリードする立場でパートナーを担っています。

津屋氏

私は新卒で他Big4コンサルティングファームに入社しました。当時は中国・アジア地域に進出する日系企業の事業計画策定支援、生産モデル拠点を構築するためのBPRなどを担当していました。 その後、2011年にEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社に入社して大規模なプロジェクトマネジメントをしたいと考えるようになりました。2014年からは現在も担当する公的機関・医療セクターのテクノロジーコンサルタントとしての道を歩みはじめたのです。 今思えば、このときがターニングポイントでした。公的機関・医療セクターのクライアントへの支援の成果が認められ、より面白い・社会課題解決に寄与する方向性でビジネスを拡大しています。

TSTでは、セクターやソリューションの垣根なく活動できる

大森

お二人が所属するTSTの概要や特徴を教えてください。

忽那氏

TSTは、テクノロジーでビジネスそのものを変革する重要性に着目し、業界・業務の深い知見・専門性を有し、かつ技術力を併せ持つコンサルタントが集まるユニットです。現在は200名弱のコンサルタントが所属しています。 TSTには大きく3つの軸があります。 1つ目の軸は業界にフォーカスし、クライアントの業界・業務の課題を捉えた、イシュードリブンで支援をしています。 2つ目の軸はIT領域のM&Aの支援。日本国内にとどまらず、アウトバウンドをメインとしてインバウンドのM&Aの支援も手掛けます。 3つ目の軸はITソリューションです。ERPなどの大規模なソリューションではなく、特定の業務領域をターゲットとしたソリューションを扱っています。システム導入そのものではなく、どのような業務構造にしていくべきかという戦略から立て、導入後の業務パフォーマンスを最大化させる適切なソリューションを選定する。ビジネストランスフォーメーションとテクノロジートランスフォーメーションの両輪を実現しています。
TSTで特徴的なのは、業界にフォーカスした支援を行っていることです。EYではマネージャーランクからデリバリーだけでなくセールスのKPIが求められます。セールスを行う場合はテクノロジーの勝負だけでは案件を獲得できません。業界や業務の課題を把握した上で提案を行う必要があります。

大森

複数の業界に横断的に関わりたい志向の方の場合は、アサインメントや配属などを工夫しているのでしょうか。

津屋氏

私のチームにも、「官公庁・公的機関だけでなく、民間企業のプロジェクトも手掛けたい」と、自らのキャリア・ポートフォリオを拡大したいと考えるメンバーもいます。その場合、メンバー自身が従事しているプロジェクトを継続しつつ、民間企業プロジェクトへスライドアサインすることもあります。 私自身はセクターオリエンテッドITサービス(Sector Oriented IT Service)を希求しており、Publicにフォーカスしています。TSTにはその他にもいろいろなセクターフォーカスチームがあります。各フォーカスチームのリーダー同士は例えば一緒にバーベキューしたり、ざっくばらんにいろいろと話し合える仲です。そのような良好なコミュニケーションのもと、メンバーの希望を加味しながら兼務のアサインをしたり、違うチームにアサインするなどの調整を日常的に行っています。

大森

専門性を究める、幅広い業界に携わるなど、TSTでは選択肢が多いのですね。一般的に総合ファームは、セクターとソリューションが明確に分かれていることが多いですが、最近では業界だけでは区切れないイシューも増えていますよね。例えば、金融業界の企業は他の業界のビジネスを新たに始めるなどです。その点、TSTはワンチームの中に業界とソリューションのチームがあるので、シームレスにコミュニケーションを取れますね。

津屋氏

そうですね。私の例を申し上げると、Publicクライアントに対してオンプレミス機器をクラウド化するプロジェクトと、大手ベンダーのライセンスにひもづかないようシステムをオープン化(Open Source Software化)していくプロジェクトを手掛けています。特にPublicや金融ではこういったシステム刷新を厳密な管理統制のもと進めており、民間企業で同様のプロジェクトが立ち上がった際には、Public側の知見を生かしてアドバイザーとしてプロジェクトに参画しており、このように垣根なく活動しています。

大森

エマージングテクノロジーのように、先端技術を生かして事業をつくるような動きもされているのでしょうか?

忽那氏

直近はSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)がそうですね。特にエネルギー業界ではサステナビリティへの取り組みが進んでいます。 その他に、他の総合ファームとの違いといえば、われわれの提供しているCIOアドバイザリーサービスでは、CIOだけでなくCXOや事業部への直接支援も手掛けています。 ビジネストランスフォーメーションとテクノロジートランスフォーメーションの両方を手掛けているからこそ、企業の幅広い方々に支援ができていることも特徴だといえます。 お客様が本当に解決したいのはビジネス課題であり、望んでいるのはビジネストランスフォーメーションです。だからこそ、ソリューションに関してはよりビジネスに近い支援を実現できるよう、サービスを経営層、事業部、IT部門の3つのレイヤーで構成しています。

社会課題を、医療×AIで解決するプロジェクト

大森

TSTの具体的なプロジェクト事例を教えていただけますか。

津屋氏

私が携わっているプロジェクトの1つに、医療DXに関わるプロジェクトがあります。医療レセプトデータの審査・支払に関する国家規模のシステムの品質向上や工程管理の支援をしております。その中で、医療データを公益目的でより幅広く利活用できるようにしたいというご相談を受けたことがありました。 ご相談の内容は、各自治体が保有する医療データを全国的に連携させて分析可能な形にできるよう、制度の改正に取り組みたいというものでした。 実は海外においては匿名加工化されていれば、個票レベルの医療データを一般の大学生が分析用データとして使用できるような国もあります。しかし、日本では関連法によって、医療データの利活用には厳しい制限があります。 日本の自治体が保有する医療データは、例えば住民が引っ越したり、または75歳になって後期高齢者医療制度に異動すると、過去のデータとの連続性が途切れてしまうといった課題があり、また当時は自治体間の医療データの連携を明確に後押しするような法解釈に乏しい状況でした。 一般的なテクノロジーコンサルティング業務の範疇ではありませんでしたが、私はクライアントとともに関連法・省令・事務連絡等を棚卸し、改正条文案を検討する支援を行いました。なかなか骨の折れる作業でしたが、結果として改正法が可決されて2020年4月に施行されたのです。非常にエキサイティングな経験でした。
お客様のEYに対する印象はさらに向上し、他ファームの追随を許さないワンチームのような一体感が生まれたのです。その後、医療データを活用した腎機能の重症化予防の分析プロジェクトを始めたいという相談があり、2020年8月から医療×AIのプロジェクトが立ち上がりました。現在も続く長期プロジェクトとなっています。

大森

お客様をさまざまな角度から支援されたのですね。津屋さんはクロスセクターで動かれているそうですが、くわしくお聞かせください。

津屋氏

現在携わっている医療×AIのプロジェクト実績が積み重なっていくことで、民間製薬企業で公益目的の研究をされている部署から引き合いがありました。 内容としては、腎疾患が悪化して人工透析に至る患者さんを減らす取り組みを支援するプロジェクトです。医療データを活用したいと考える自治体と製薬会社がタッグを組み、実際のデータを利活用して、その自治体に住む健康リスクのある人たちへの健康指導に生かします。 そこでハイリスク者にあたる方々の傾向をつかむために、健診データと医療データを機械学習モデルに投入し、将来的な腎機能の健診数値を予測する仕組みを構築しました。 悪化するリスクがある方たちの症状がさらに悪化する前に健康指導を行うことで、結果として医療費を適正化することができます。民間製薬企業、自治体の公益目的の取り組みをEYが支援するというクロスセクターの動きです。

大森

影響範囲が広いプロジェクトを担当されていますね。津屋さんがやりがいを感じている部分を教えていただけますか。

津屋氏

面白みは「データサイエンスチーム」というセクターを横断する分析の専門部署とコラボレーションし、プロジェクトを進めていけることですね。 まだ途上にあるプロジェクトであり、やりがいを真に実感するまでは至っていないのですが、少しずつでも社会課題の解決につながっているという実感はあります。 しかし、既に存在するデータを活用したプロジェクトであるため、逆に法定健診を受けない方々―――一番健康リスクが高い方々へのアプローチには限界があるため、その点をどうにかして解決できれば、さらにインパクトが出せるのではないかと考えています。

大森

一緒に働くコンサルタントに対しては、どのような想いを持っていますか?

津屋氏

コンサル業界は流動性が高いので、今のメンバーと定年まで一緒に働くことは難しいと考えています。それなので、人生の一時期、同じプロジェクトにいることには縁があるわけで、成功体験を共有したいと思っています。もし、一緒に働いたメンバーが将来的にEYを旅立つとしても、その後も一人の人間としてお付き合いしたいと思っていますし、そんな関係性を築いていきたいです。

EYは中途が活躍しやすく、評価の透明性が高い

大森

EYのカルチャーについても教えてください。2019年に近藤さんが代表になられてから、大きな変化があったのではないでしょうか。

忽那氏

非常に変わりました。一番の変化は、評価の基準とプロセスが刷新されたことです。絶対評価のよりどころとなる評価基準がランクごとに明確になり、評価への納得度が高まりました。 また、他ファームを経験した近藤がEYの特徴だと言っているのが「コラボレーション」です。チーム内のコラボレーションはもちろん、クロスセクターでのコラボレーションができるのがEYの特徴です。

津屋氏

他のBIG4との違いを付け加えるとすれば、中途採用の比率が高く、新卒採用・中途採用双方が客観的に評価される土壌があると思います。私自身は他のBIG4に新卒で入社しましたが、経営層が新卒採用出身者で占められているケースがあります。EYはさまざまなバックグラウンドの人が集まっているので、新卒採用と中途採用のバランスがいいですし、中途採用の方が活躍しやすいと感じています。

大森

御社が成長戦略を描く中で、セールスのミッションやKPIが厳しいという印象が一部にあるようですが、いかがですか。

津屋氏

先ほどの評価制度と関連してお話しすると、実績を出しているコンサルタントは確実に年俸ならびにパフォーマンスボーナスが上がっており、成果を出す人が正当に評価されていると感じます。 KPIについて、確かに難易度が高まっているのかもしれませんが、私たちは毎期達成している状況です。高い目標ではありますが、必要以上に不安に駆られるようなことはなく、できるという前向きな確信を持って 臨んでいます。また、単に目標が設定されるだけではなく、各チームがお互いのコラボレーションし協力し合いながら達成しようというカルチャーが醸成しています。 私は前職で近藤さんの下で働いていたことがあります。当時、日本のメーカーが中国に生産拠点を設立する支援を行うプロジェクトに所属していました。中国に赴任するという話が出たときに、時を同じくして家族の重篤な病が発覚したため、なるべく傍にいたいと考え、近藤さんに相談したのです。そのとき、近藤さんは「仕事は仕事でしかない。今はご家族を最優先にしなさい」と言ってくれて、中国から日本に頻繁に戻れるよう段取りをつけてくれました。 そういった便宜がはかられるとコストインパクトがあるため、たいていの場合は評価が下方修正になるものです。しかし、そういったこともなく切り分けて考えてくださいました。そんな経験から、私は近藤さんがEYに来てくれたときは本当にうれしかったですね。

大森

とてもすてきな エピソードですね。最後に、TSTの求める人物像を教えてください。

忽那氏

私たちが大切にしているのは、お互いが一緒に働きたいと思えることです。候補者の方々は、この分野のスキルを高めたい、社会に影響のあることに関与していきたいなどのキャリア課題を必ず持って います。その課題をEYでなら解決できると思ってくださる方に来てもらえたら、それが何よりです。

大森

EYの風通しの良さ、シームレスにコラボレーションができる環境について、よく理解できました。ありがとうございました。
左:弊社大森 右:EYストラテジー・アンド・コンサルティング 忽那氏、津屋氏

構成・編集:久保佳那 撮影:赤松洋太

※本記事の内容はすべて取材当時のものです。