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2025年9月8日(月)ブログ

これからのコンサルに求められるスキルとは?役に立つコンサルか、意味あるコンサルか

現代のコンサルティング業界は、大きな転換点を迎えています。従来の「役に立つ」コンサルティングから、真に「意味ある」コンサルティングへ。このシフトによって、どのようなスキルが今後重要になるのか。従来のアプローチの何が問題なのか。本当に価値のあるコンサルティングとは何かという問いが浮かび上がっています。

興味深いのは、日本の「失われた30年」とコンサルティング業界の拡大が、ほぼ同じ時期に起きていることです。長年主流だったソリューション中心のアプローチが、限界を迎えているからです。クライアントが本当に必要としているのは、新しいツールやシステムの導入ではありません。本質的な課題を見極め、その解決に向けた戦略を描く力です。

本記事では、公共分野で十数年の実績を持つグラビス・アーキテクツ代表・古見氏へのインタビューをもとに、これからのコンサルタントに求められる本質的なスキルを解説していきます。

変革期にあるコンサルティング業界

現代のコンサルティング業界は大きな転換点を迎えています。従来の「役に立つ」コンサルティングから、真に「意味ある」コンサルティングへのシフトが求められており、それに伴ってコンサルタントに必要なスキルセットも根本的に変化しています。

なぜこうした変化が起きているのでしょうか。長年主流だったソリューション中心のアプローチが、限界を迎えているからです。クライアントが本当に必要としているのは、新しいツールやシステムの導入ではありません。本質的な課題を見極め、その解決に向けた戦略を描く力です。

なぜ今、コンサルスキルの見直しが必要なのか

失われた30年とコンサルティング業界の関係

1989年から始まった「失われた30年」とコンサルティング業界の拡大は、実は同じ時期に起こっています。この期間中、日本企業の海外進出を支援することで業界は成長しましたが、結果として国内産業の空洞化を助長した側面があります。

現在のコンサル業界の課題

  • サービスの同質化(携帯電話のガラケー化現象と類似)
  • 大量生産・大量消費型のビジネスモデル
  • 目的よりも手段が先行する提案スタイル

この構造的な問題により、多くのコンサルティングプロジェクトが表面的な改善に留まり、クライアントの根本的な課題解決に至らないケースが増加しています。

解決策過剰供給の時代

現在は「ソリューション過多」の時代です。タクシーに乗っても様々なSaaSソリューションの広告が目に入るように、解決策は豊富にありますが、クライアントはどの解決策を選ぶべきかわからない状況に陥っています。

この状況において、コンサルタントの役割は「ソリューションを提案する人」から「最適な選択を支援する人」へと変化する必要があります。技術的な知識よりも、クライアントのビジネス環境と課題を深く理解し、適切な判断を支援する能力が重要になっています。

これからのコンサルタントに必要な5つの核心スキル

1. 問題特定スキル

従来のアプローチは「ソリューションありき」でした。しかし、これからは真の問題を見つけ出す能力こそが求められます。

コンサルタントは「問題を解決する人」である前に、**「問題を特定できる人」**でなければなりません。SAPなどのソリューションを売ることが目的ではなく、クライアントが本当に解決すべき課題を見極めるスキルが重要です。

このスキルには何が含まれるのでしょうか。表面的な症状ではなく根本原因を見抜く洞察力。複数の関係者から異なる視点を聞き取る力。そして、データと現場感覚の両方を統合して判断する力です。

2. 目的・手段の整理スキル

コンサルタントは以下のように常に目的と手段の関係を明確にし、手段の提供に終始しない姿勢が求められます。

自分は手段を目的化していないか。このコンサルティングは何のために行うのか。クライアントの真の目的は何か。こうした問いを、常に自分に投げかける必要があります。

多くのプロジェクトが失敗するのは、手段が目的化してしまうからです。

3. 長期的視点での戦略思考スキル

2040年問題への対応力

2040年、日本の高齢者数はピークを迎えます。この転換期に向けて求められるのは、社会構造の変化を予測する力、15〜20年先を見据えた戦略立案スキル、そして複合的な社会課題への対応策を考える力です。

短期的な収益改善だけでなく、社会の構造的変化を見据えた戦略思考が、これからのコンサルタントには不可欠です。

4. 業務プロセス変革スキル

従来は手続き処理型の業務効率化が主流でした。しかし、これからは問題解決型への業務変革が求められます。

特に公共分野では、AIやロボティクスを活用した効率化と、対人サービスの専門性向上という両軸でのスキルが必要です。単純作業の自動化だけでなく、人間にしかできない価値創造に焦点を当てた業務設計能力が重要になっています。

5. ライフテーマ設定スキル

守破離の「離」まで到達する成長スキルも欠かせません。守の段階では、基本的な型を習得します(スタッフレベル)。破の段階では、自分なりのオリジナリティを構築します(マネージャーレベル)。そして離の段階では、外向きの自己実現を目指します。

この「離」の段階では、自分のスキル向上だけでなく、社会をどうより良くするかという視点が重要になります。個人の成長を社会貢献につなげる意識が、真のコンサルタントには必要です。

実践的なコンサルスキル向上のアプローチ

規模よりも質を重視する思考法

大手コンサルティングファームが人数拡大をKPIにする中、真に優秀なコンサルタントは限られています。1万人の優秀なコンサルタントが日本にいるわけではないという現実を受け入れ、質の高いサービス提供にフォーカスすることが重要です。

量的拡大よりも、一人ひとりのコンサルタントがより深い価値を提供できるようになることが、業界全体の発展につながります。

専門分野での深い知見の構築

グラビスアーキテクツ社の事例を見てみましょう。公共分野への100%の特化、プライムコントラクターとしての直接提案、入札プロセスや予算取得の専門知識。こうした取り組みが示すのは、特定分野での深い専門性を構築することで、真に価値のあるコンサルティングが可能になるということです。

広く浅い知識よりも、特定領域での圧倒的な深さが重要です。

クライアントファーストの実践

コンサルティング会社に所属することと、コンサルタントになることは異なります。

真のコンサルタントは、クライアントの利益を最優先に考え、長期的な関係性を重視し、業界の慣習よりもクライアントのニーズを優先します。

短期的な売上よりも、クライアントの長期的な成功を支援する姿勢が、信頼関係の構築と継続的な価値提供につながります。

まとめ

これからのコンサルタントに求められるスキルは、単なる業務効率化や既存ソリューションの提案を超えた、より本質的なものです。

問題発見能力の向上として、ソリューションありきではない真の課題特定が必要です。長期的視点の獲得として、社会の変化を見据えた戦略思考を身につけることが重要です。さらに、専門性の深化として特定分野での圧倒的な知見構築、問題発見能力の向上として自己実現を外向きに展開する姿勢、そして質の追求として規模よりも質を重視するマインドセットが求められます。

コンサルタントという職業を通じて社会をより良くしたいと考える人材こそが、これからの時代に求められる真のコンサルスキルを身につけることができるでしょう。

「役に立つ」コンサルから「意味ある」コンサルへ。この転換期において、コンサルタント一人ひとりが自分の仕事の意味を問い直し、スキルアップを図ることが、業界全体の発展と日本社会の課題解決につながるのです。

大森崇のプロフィール写真
リネアコンサルティング株式会社 代表取締役社長 大森 崇
1998年にリクルートグループ入社後、ベリングポイント(現PwCコンサルティング)にて、採用責任者として年間250名以上のコンサルタント採用や研修を担当。2008年にリネアコンサルティングを設立し、代表取締役社長に就任。今まで1万人以上の転職支援や、企業の採用支援RPOに関わる。企業の採用・経営支援に従事する傍ら、Gallup認定ストレングスコーチとしても活動。ビズリーチ「日本ヘッドハンター大賞」コンサル部門MVP、日経HRエージェントアワードMVPなど受賞歴多数。YouTube「コンサルキャリアch」運営。